サンパウロでの日本企業駐在員は現地では金持階級とみなされます。そうすると家族を連れての赴任であっても家事の一部なり大部分を「お手伝いさん」(faxineira―ファシネイラと言います)に任せることが「上流階級」の暗黙のルールになっています。そのお手伝いさんが部屋に入れるように、サンパウロ中心部の高層アパートの殆ど全てに裏の勝手口というべきドアがある上に、エレベータも別に設置されています。
お手伝いさんへのお手当は08年ごろで月200―300レアルほど。文書での契約はなく、毎週現金で食卓の上に置いておく(今はちゃんと契約するケースが増えてきたようですが)。私は単身赴任だったので、ほかの日本人駐在員から紹介されたMariaさんという人に掃除と洗濯だけ一週間に2日でお願いしていました。信用が置ける、要は盗みなどを働かない誠実な彼女は日本人駐在員の間で人気がありました。
私は平日の昼間は会社にいますし宿泊出張も頻繁、そもそも単身なので洗濯物も少なく部屋もそれほど汚さないので、おそらく相当楽な仕事だったでしょうが、何のトラブルなく仕事はきっちりやってくれました。
唯一困ったのはコミュニケーション手段。Mariaさんと直接顔を合わせることは殆どなく、伝言があったらお互いメモを書いてテーブルの上に置いていく形を取っていました。が、Mariaさん、読み書きがあまり得意でない。彼女の書いた伝言(もちろんポルトガル語)が読めない! 文字の書き方が独特の上に単語を区切って書いていない、綴りも適当。会社の現地スタッフに解読してもらって何とか意思疎通を図っていました。
ブラジルのような新興国で、かつ貧富の差が激しい国では、一定の割合で読み書きが不得意な人がいることもあります。でも、Mariaさんのおかげもあり、楽しい生活をサンパウロで送ることができました。
サンパウロのアパートのダイニングテーブルと、キッチン奥にある「勝手口」
欧州チーム Y.T.